生命資源研究・支援センター 疾患モデル分野

研究室について

疾患モデル分野では、マウスの遺伝子操作技術を駆使し、ゲノム機能解析や、変異マウスの解析、ヒト遺伝病のモデルマウスの作出と解析を行っている。

1.マウス遺伝子操作法の開発と応用

Cre/変異loxシステムは、ゲノム上にあらかじめ挿入しておいた変異lox部位へ任意の遺伝子を挿入出来るシステムであり、疾患モデル動物の開発には非常に有効な手段である。この変異loxを組み込んだ可変型ノックアウトベクターを作製、ヒトの遺伝病の原因となっている変異遺伝子挿入、これらを交配することで、モデルマウスを作出できる。またCRISPR/Cas9を用いたノックアウト・ノックインのシステムも導入、受精卵レベル・ES細胞レベルでの遺伝子操作を行っている。

2.可変型遺伝子トラップクローンの解析

今までに得られたトラップクローンの中でも、タンパクをコードしている遺伝子では無い領域にトラップベクターが挿入されているクローンに注目し、解析を行っている。中でも、非コード長鎖RNA遺伝子をトラップしていると考えられる13クローンを選び、マウスライン樹立、トラップベクター挿入部位の決定、転写産物の同定、マウスにおける発現解析及び表現型解析を進めている。

3.日本産野生マウスMSM/Ms系統を用いた表現型解析

がん遺伝子であるc-Maf遺伝子を導入したMSM/Msトランスジェニックラインを樹立、発がん率がC57BL/6と変わるのかどうか解析を行っている。C57BL/6では、cMaf過剰発現により細胞増殖に関わるいくつかの遺伝子の発現が誘導されるが、MSM/Msでは、それらの遺伝子の発現上昇が観察されないことから、MSM/Msにおいては異なる遺伝子カスケードが働いていると考えられる。

4.Danforth’s short tail (Sd)変異マウスの解析

Sd変異マウスは、脊椎欠損、鎖肛、腎臓欠損の表現型を示す自然発生の変異マウスである。我々は、Sd変異領域のコスミドコンティグを作製しシーケンスを行った結果、Sdゲノムにおける変異はトランスポゾン(ETn)の挿入であることを発見した。ETn挿入部位近傍には膵臓発生のマスター遺伝子であるPtf1a遺伝子が存在しており、この遺伝子が原因であるのか明らかにするため、Sdマウス胚よりES細胞を樹立、変異loxで挟むことでG418耐性(neo)遺伝子を置換可能にした可変型targeting vectorを用い、Sdアレル上のPtf1a遺伝子を破壊した。このKOマウスでは、Sd表現型は消失し、さらに、neo遺伝子をCreによる組換えでPtf1a cDNAに置換、内在性Ptf1a プロモーター下にcDNAを発現させることでPtf1aの発現を回復させたところ、Sdの表現型も回復した。また、この部位にlacZを挿入、SdアレルでのPtf1a発現を検討したところ、Sdマウスで異常が見られる組織の原基である、脊索、cloaca、中腎で発現することが明らかとなった。このことは、通常は発生時期の膵臓で主に発現するPtf1aが、Sd胚では異所性発現することでSdの表現型を引き起こしていることを強く示唆する。

2つの研究プロジェクト

4つの研究プロジェクト
ゲノム工学 発生遺伝
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