研究内容

仙波圭

Sd and Sktグループ

我々の研究グループの目的は、脊椎・椎間板に表現型を示す変異マウス(Danforth's short tail変異マウス、Sickle tail遺伝子変異マウス等)を使用し、脊椎・椎間板の発生のメカニズムと関連分子に関する新規知見の獲得と脊椎・椎間板疾患の発症の分子機構の解明である。また、脊椎・椎間板疾患に合併する肛門、直腸、腎臓の発生異常に対しても理解を深めたいと考えている。

1. 脊椎研究

自然発症で得られたDanforth's short tail (Sd)変異マウスは、脊椎欠損、鎖肛、腎臓欠損を呈し、ヒトのCaudal regressionのモデルであるが、Sd変異マウスの原因遺伝子は、マウス発見より80年近く経過しているにもかかわらず、まだ同定されていない。Sd変異ホモ接合体マウスは、発生早期に脊索が消失することで上位脊椎以下が肋骨とともに欠損する。これは、脊索の早期消失と同レベルの神経管より底板誘導の停止、脊索と底板の消失による体節から椎板への分化停止が原因であることを示した(図1a-i) (2)。また、Sd変異ヘテロ接合体マウスは、尾椎、仙椎の欠損に加え、全脊椎の椎間板において髄核組織が欠損するという興味深い表現型を示す(図2)。

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これまでの解析により、この原因遺伝子は、我々の研究グループが発見したマウス第2番染色体上のSickel tail (Skt )遺伝子の上流0.6cM、物理的距離にして約1200kbあたりに原因遺伝子があることを交配実験及びゲノム解析の結果見出した(5)。この知見をもとに、Sd変異マウスの原因遺伝子座領域の詳細なゲノム解析を行った結果、Sd変異マウスの原因について、有力な知見を得ることができた。現在、「Sd変異マウスの原因遺伝子の確定」、「その遺伝子の機能解析」、「その関連シグナル分子の発見」を行っている。

2.椎間板研究

Sd変異マウスの椎間板髄核組織の欠損を明らかにしたことに加え、我々の研究グループは、遺伝子トラップ法で作製されたSktGtのレポーター遺伝子がマウス胚における脊索と成体の椎間板髄核細胞に特異的に発現し、椎間板形成に関与しているSickle tail (Skt)遺伝子をトラップしていることを突き止めた(5)SktGtホモ接合体変異マウスは、椎間板形成異常を示す (図2)。このマウスSkt遺伝子の研究で得た知見をもとに、ヒトホモログ(ヒトSKT遺伝子)を同定するに至り、マウスと同様にSKT遺伝子も椎間板で発現し、椎間板疾患との関連性を示すことに成功した(4)。これらの一連の解析の中で、SktGtマウスはレポーター遺伝子(β-geo)によりラベルされていることを利用し、このSktGtをマーカーにしてマウス胚における脊索とマウス成体の椎間板髄核を特異的に同定、選別し、椎間板研究への応用ができることを示した(図3)(1, 2, 3)同様に、Pax1-lacZをマーカーにしてマウス胚における椎板とマウス成体の椎間板線維輪を特異的に同定、選別できることも示した(図4)。現在、これらの遺伝子改変マウスを使用して椎間板の発生と椎間板疾患の発症のメカニズムについて研究を進めている。

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